中国政府,モバイルゲームに関する法律を強化

数か月に及ぶ審査で望まれないコンテンツを根絶やしにできるが,最も大きな人口を抱える市場でのビジネスはさらに複雑さを増す。

 中国政府がデジタルコンテンツの内容を審査する行政的なプロセスを増やしたことにより,今後中国でゲームを販売しようとしているゲーム開発会社は,さらに複雑な手続きを経なければならなくなった。

 この新たな行程は,海外メディアの中国国内への進出に気を揉む国家新聞出版広電総局(SAPPRFT)によるものだ。今年3月,SAPPRFTは海外のゲーム会社や海外と提携している国内企業が手掛けるオンラインコンテンツに干渉し始めたのである。

 ニューヨークタイムス(関連URL)の報道によると,この新しい条例はゲーム以外の幅広いオンラインコンテンツにも適用されるという。外国企業が中国市場に参入する場合,政府の許可を得た中国企業と提携しなければならなくなったのだ。

 ペンシルバニア大学の講師であり,中国の法律に詳しいJacques deLisle氏がニューヨークタイムスに話たところによると,これは海外や西洋の考え方が消費者に影響を与えることを制限するために行われたいくつかの法改正の一つであり,さらには勃興するインターネットやソーシャルメディアを管轄するためのさらに大きな計画の一部であるという。

 7月1日から施行されるゲームに関するSAPPRFTの特別条例(中国語記事)は,この大きな動きから派生したものであるのは間違いない。公式資料を翻訳したTech in Asia誌によると,政治や軍事に関するトピックが含まれる,ストーリー性のあるゲームコンテンツは,とくに厳しく審査される対象になるという。

 しかしながら,ストーリー性がない場合でもすべてのゲームは,オンラインでリリースさせる以前に,その申請書や関連する免許や許可書などの書類を届けたうえで,最低でも20日かかるという政府による審査を受ける必要がある。Tech in Asia誌の説明によると,こうした申請用の書類が適切に用意されたかどうかを地元政府が評価するために5日間の期間が必要になり,さらにSAPPRFTが受け取りを承諾するかどうかを判断するのに10日を要し,そこから申請者にフィードバックされるのに,また何日も掛かるのである。

 XboxとPlayStationの15年ぶりの販売規制解除は,ゲームコンテンツに対する締め付けとセットになっている。2014年1月に行われた記者会見(関連英文記事)において,中国文化相の蔡武氏は,「中国に対して敵対的なもの,中国政府の見解と異なる意見のものは許可されない。我々は,新しい風を呼び込むために窓を開けておく必要はあると思っているが,ハエや蚊の侵入を防ぐにはスクリーンを張っておく必要もあるのだ」と話していた。

 2015年9月には,Sony Computer Entertainment(現Sony Interactive Entertainment)のCEO,Andrew House氏も,中国政府の圧力を認めた発言(関連英文記事)をしており,PlayStation 4のローンチに成功したあとにも「我々は,まだ検閲という挑戦を受けている。さまざま対策をしているが,非常に時間の掛かることだ」と話していた。

 中国市場の魅力というのは,もちろんその人口の多さにあり,この人口の多くがスマートフォンの浸透に合わせるかのようにモバイルゲームに慣れ親しんでいる。中国のゲームパブリッシャ大手であるNetEaseは,ほんの4年前までは95%にも及ぶ収益をPCから得ていたが,そのたった2年後にはモバイルゲーム市場から収益の大部分を得るようになったと,最近の本誌インタビュー(関連英文記事)で語っている。

 究極的に言って,モバイルゲーム市場として世界でも最も価値のある市場(関連英文記事)であるのは多くの人が認めるところであろうが,こうした規制は外国企業に,投資が十分に回収できるものになるのかどうか,疑問を感じさせているのではないだろうか。新しい条例は,これまでは良い選択の一つであった中国の地元企業との提携を,必須のものにしてしまったが,中国政府がどのようなコンテンツを認めるのかということについては不鮮明である。

 しかし,「Marvel: Contest of Champions」を中国で成功させたKabamのような例もあるので,同社COOのKent Wakeford氏と行った我々のインタビュー記事(日本語翻訳記事)を合わせてお読みいただくとよいだろう。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら