InsomniacがVRにコミットする理由

 InsomniacのTed Price氏が,発表されたばかりのOculus Rift専用タイトル2本など,今年3本のVRゲームをリリースする自身のスタジオの計画を語る。

 多くの大手開発企業がVR(仮想現実)ヘッドギアの最初の波を静観する中,Insomniacは頭から思い切り飛び込もうとしている。同スタジオは,今月18日にOculus Rift向けに2本の専用タイトルを作成することに合意したことを発表した。1本は3人称視点のアドベンチャー格闘ゲーム「Feral Rights」(今秋発売予定),もう1本は1人称視点のPvP魔法格闘ゲーム「The Unspoken」(年末発売予定)だ。さらに,既報のとおりVRアドベンチャーゲーム「Edge of Nowhere」(今春発売予定)もある。

 このほどGamesIndustry.bizのインタビューを受けたInsomniacの創立者でCEOのTed Price氏は,自身のスタジオがこれほど早くVRを受け入れた理由を次のように説明した。

 「私たちにとって,これはここ最近で一番のチャンスです。創造性のトレーニングに役立つ設計ノウハウを蓄積することができますから。VRに関する,とても面白くて予想のつかない問題が見つかっています。私たちがとくに魅力を感じるのは,新しいことを試すこと,訴求力のあるコンテンツを制作するために多くのイノベーションが必要なプラットフォームに挑戦することです」


「一番苦労しているのは,どのようにVRに適したカメラやキャラクター操作や空間を設計するかです」

 Price氏は,VRにすることでプレイヤーが好きなところを見られるようになったり,Oculus Touchのような新しいインタフェースを利用したりするため,開発者にとってこれまで当たり前に感じていた設計を再考する必要があり,イノベーションが必須になると説明した。

 「一番苦労しているのは,どのようにVRに適したカメラやキャラクター操作や空間を設計するかです」と,Price氏は言う。「私たちのスタジオには,豊富なゲーム設計経験がありますが,それでもVRの場合,カメラはプレイヤー自身であることが多いため,たとえばこれまでの3人称視点のアクションゲームでのお約束とはかなり違ったものになるという難しさがあります。『Edge of Nowhere』のようなゲームでは,レイアウトを作成しているときに,空間をどう設計するか,カメラの側方や後方への動きをどう処理するか,カメラの揺れをどうするか,カメラの微妙な動きはどうするか,というような点がすべて大問題として立ちはだかります」

三人称視点の格闘ゲーム「Feral Rites」

 「The Unspoken」でも,同様の問題が生じている。単にVRだからという話ではない。アリーナという舞台でプレイヤーがお互いに競い合う1人称視点のゲームだからだ。

 「PvPのゲームでは,いつでも多くのことを考慮する必要があります」と,Price氏は指摘する。「仮想空間では,プレイヤーの周囲を見渡そうとする傾向が強くなるという点が少し異なります。ですから,対戦相手は見られていないときに攻撃するチャンスが多くなります。プレイヤーが従来の2D(ディスプレイ)ゲームとは異なる動きをしがちであるため,呪文や空間の設計アプローチも変化するのです。
 呪文詠唱メカニズムの仕組みやタイミングに関しては,多くの実験を行いました。人々にゲームを体験してもらい,その様子を注意深く見守り,たとえば『魔法の火の玉を投げつけるという体験は爽快だったか』『敵に照準を合わせるのは簡単すぎず,難しすぎなかったか』というような質問をしました」

 このような問題に現在取り組んでいることは,Insomniacの開発者たちにとって,単なる創造性の訓練に留まるものではない。Price氏は,VRの来るべき明るい未来に先を行く力をつけるものとなることを望んでいる。


「VRはすぐに爆発的なヒットになることはないでしょう。でも,消えることはないと考えています」
 「私たちは,VRは今まさに誕生しようとしている新しい業界であり,今後も発展していくと考えています」と,Price氏は語った。「すぐに爆発的なヒットになることはないでしょう。でも,消えることはないと考えています。Facebookのような巨大企業が参画しているのを考えれば,私たちの文化に大きな影響を与えることなく消え去るとは考えにくいものです」

 「Feral Rights」と「The Unspoken」はRift専用タイトルだが,その知的所有権はInsomniacのものだ。だから,続編を作るとすれば,別のプラットフォームでリリースすることも可能だという。しかし,非VR版のゲームを予約できたり,たとえば「Edge of Nowhere」がさまざまなプラットフォームに対応したりするという期待を持つべきではなさそうだ。

 「大きな変更を加える必要があると思います」と,Price氏は説明した。「作成中のゲームは,VRありきで設計されていますし,ゲーム操作の大部分がVRの使用を前提にしたものです。『The Unspoken』の場合はOculus Touchコントローラを使いますし, 3作ともに周囲を見回すことでプレイヤーが自由にカメラを動かせます。ゲーム操作の中には,周囲のオブジェクトを凝視したり,見上げたり見下ろしたりすることを利用するというアイデアに基づくものがあります。また,ゲームの中で作り出される感情的な揺さぶりは,VRが持つプレイヤーの体験を増幅する力を存分に発揮するシチュエーションで生まれます」

1人称視点のアリーナ型VR格闘ゲーム「The Unspoken」

 そのような懸念によって,将来的にパブリッシャーが同じゲームのVR版と非VR版をリリースすることをためらうようになるだろうかと問われると,Price氏はまだ現時点では見えておらず,Insomniacが挑戦しようとする類のものではないが,いろいろなチャンスがあるだろうと話した。

「たとえ従来型のゲームであっても,プレイヤーはVRなら無限に大きな画面で楽しめます」

 「昨日Jason Rubinが言っていた言葉を借りるなら,たとえ従来型のゲームであっても,VRなら無限に大きな画面で楽しめます」とPrice氏は言う。「そして,ヘッドギアの中の世界について考えれば,将来的に従来型のゲームをVRヘッドギアで遊べるようになれば,その体験もずっと進化したものになるのではないでしょうか。でも,従来型のゲームをVRで遊ぶ時代はまだ先の話です」

 「デザイナーとしての私の勘は,とくにVRに向いているプレイヤーに体験をさせ,効果音を作り出し,キャラクターとやり取りをし,そこにいるかのような感覚を高める環境を生むというような方向で使用することに,私たちが夢中になるだろうと告げています。そこには,とてもクリエイティブな楽しさがあります。Insomniacでゲームを設計する場合,プラットフォームを特に考慮して,ゲームの設計がそのプラットフォームに特に合ったものになるようにしようとするのです」

 「デザイナーとしての私の勘では,VRを使うことに私たちは夢中になるだろうと告げています。とくに,プレイヤーになにかを体験をさせたり,効果音を作り出したり,キャラクターとやり取りをしたり,そこにいるかのような感覚を高める環境を作るというような方向で使用することにです。そこには,とてもクリエイティブな楽しさがあります。Insomniacでゲームを設計する場合,プラットフォームをとくに考慮して,ゲームの設計がそのプラットフォームに合ったものになるようにしようとするのです」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら